【鉄道コラム】「北海道新幹線」札幌延伸まであと10年◆開通すれば誰が得をするか?

「北海道新幹線」開通後の並行在来線問題

北海道新幹線(新函館北斗ー札幌間)211.5kmの工事が、現在のところ2030年度末開業を目指して進められています。

開通まであと10年となったこの時期、延伸開業時にJR北海道から経営分離される並行在来線(函館本線:函館ー小樽間)の在り方がいまだ見通せていないことが北海道で話題になっています。

北海道新聞社が自治体の首長に行ったアンケートでは、函館本線:函館―長万部間の沿線7市町のうち、七飯と長万部が「一部区間の廃止もやむを得ない」としたものの、大半の自治体は様子見が続く。21年度は、道による需要予測調査の結果が公表される予定で、存廃の議論が加速しそうとのこと。

 北海道新幹線の並行在来線は、函館本線:函館―小樽間の287.8kmがそれに当たります。このうち道南の函館―長万部間は147.6kmで、旅客列車のほか、本州と北海道を結ぶ貨物列車も運行されています。

貨物列車も通る函館ー長万部間と、純然たるローカル線の長万部ー小樽間の環境の違いも今後の論議の一つになりそうです。

2021年4月5日付北海道新聞より

東京~札幌間4時間半を目指している「東北・北海道新幹線」

札幌まで延伸すると、東京ー札幌間1035.2kmを最短4時間半で結ぼうとしています。

出典:北海道庁ホームページ

これにより、首都圏~北海道間の現在航空機を利用している一定の層を取り込むことができるといわれています。

30年以上前までは首都圏~北海道間の旅客需要の半分以上を鉄道が担っていた時代がありました。

その時代に少しでも戻すことができることになります。

それには、日本屈指のドル箱航空路線である「東京(羽田・成田)-札幌(新千歳)」からどこまでシェアを奪えるかにかかっています。

旅客需要を取り込むことで、経営が苦しいJR北海道にも明るい見通しがつくといわれていますが、実は一番の利を得るのがJR東日本なのではないでしょうか。

「北海道新幹線」札幌延伸はJR東日本にとってメリット

北海道新幹線の工事費用は当たり前ですが、JR東日本の負担はありません。

それにもかかわらず、札幌まで北海道新幹線が開通した場合はJR東日本もかなりの恩恵を得ることができます。札幌や北海道各地が目的だとしても、東京から新青森までのJR東日本区間を新幹線の乗客が通り抜けてくれるからです。

現在開通している上越新幹線、東北新幹線や山形新幹線、秋田新幹線は沿線住民などその需要から、首都圏からの乗客が先細りで終点に近づけば近づくほど減っていき、木に例えれば細い枝になっていきます。

しかし札幌を目的とする新幹線であれば、JR東日本の管轄である新青森までは太い幹のまま旅客需要が得られるのです。

これは北陸新幹線でも似ている状況で、北陸新幹線は東京ー金沢間が開通しており、東京ー上越妙高館がJR東日本、上越妙高ー金沢間がJR西日本に所属しますが、JR西日本にある北陸3県(富山県・金沢県・福井県)の乗客を航空機から奪い取った結果、おいしい思いをしているのが、JR東日本なのです。

従来は、長野が終点で乗客が先細りだった長野新幹線(東京ー長野間)ですが、北陸新幹線(長野ー金沢間)の開通で北陸地方の乗客がJR東日本の区間を乗車するようになったのです。細い枝が太い幹になったんですね。

1分でもスピードアップすればするほど増収が見込める

「4時間の壁」という、航空機と鉄道のシェアの攻防を表す言葉があります。

これは、所要時間が鉄道で4時間以内の区間では、飛行機より鉄道のほうが利用者が多くなる傾向があります。飛行機は速いですが、空港までのアクセスに時間がかかるため、鉄道の所要時間が4時間以内なら飛行機と同等か、鉄道のほうが目的地に早く着ける可能性が高くなるためです。逆に鉄道で4時間以上かかる区間では、空港までのアクセスを含めても飛行機のほうが目的地に早く着けることが多く、飛行機の利用者が多くなる傾向があります。

現状の技術では東京-札幌間は4時間で結ぶのは不可能といわれていますが、4時間に1分でも近づけば近づくほどシェアを奪える可能性があるということです。

これらのことからJR東日本でも手をこまねいているわけではなく、将来の札幌延伸に向けて投資をしています。

そのひとつが、2019年(令和元年)5月に登場した新幹線E956形電車(愛称「ALFA-X」)の開発です。

360km/h営業運転が可能な営業車両の開発を目的とし、2019年5月から2022年3月にかけて400km/h走行なども含めた様々な試験を実施しているところです。

新幹線E956形電車

他の投資として、現状で最高時速260kmの東北新幹線(盛岡―新青森間)を最高時速320km/hに、同(上野―大宮間)を時速110km/hから130km/hに向上させると2020年10月6日に発表しています。※東北新幹線(宇都宮ー盛岡間)は既に最高時速320km/hとなっています。

盛岡―新青森間は2020年10月から7年程度をかけて工事し、最大5分程度の時間短縮を実現する予定で、上野―大宮間は既に2021年3月のダイヤ改正で1分程度の短縮を実現しています。

このようにお膳立てを整えて、JR東日本は札幌延伸を待ち構えています。

JR北海道も1分を絞り出す努力をしている

北海道新幹線(新函館北斗ー札幌間)は、当初設計上の最高速度を260km/hとして、建設が進められていましたが、JR北海道では320km/h走行へ建設費用の追加負担をすることにしました。

また、従来在来線と線路を共用している青函トンネル区間で最高速度を140km/hに制限していました。これは新幹線列車と貨物列車がトンネル内ですれ違う際、風圧でコンテナが荷くずれする可能性を回避するためです。研究の結果、この制限を2019年には160km/hまで引き上げています。

さらに、2020年12月31日~2021年1月4の5日間、始発から15時半頃までの間に青函トンネルを走行する列車については、実験的に青函トンネル内を210km/hで走行することにしました。(国土交通省発表)

このように1分を絞り出す努力は、JR東日本やJR北海道共にこれからもしていくことと思われます。

まとめ

北海道新幹線」札幌延伸について、気になっていることを書き込みしてみました。

北海道、JR北海道、北海道民の方に意識が向きそうな北海道新幹線ですが、「札幌延伸となると一番恩恵を受けるのが、太い幹になるJR東日本の東北新幹線の増収」ということについて考えてみました。

「北海道新幹線」札幌延伸により、もっと北海道の発展のためになるようになったらいいですね。

最後までお読みいただきありがとうございました。